インスタグラムに、365日間毎日違うレシピのおにぎりをアップしているemi-onigiri365ことユウコさん。
現在彼女は、このおにぎりをお母様(以下母)と二人三脚で毎朝作り、それをアップしている。食材を手に入れてくるのは ユウコ さん。そのレシピを考えて作るのはお母さんだ。
今回、彼女とお母さんのお二人にインタビュー。始めたきっかけや知られざる苦労も聞いてきました!
――まず、この企画はいつから始められたのですか?
ユウコ 「2017年4月3日から365日間やって、いったん1か月休んで、そして昨年から5月7日から365日続けてました。3シーズン目となる今年は8月16日から始めていますね」
――ということは・・・今までに作られたおにぎりは何種類になる?
ユウコ 「今日(9/26現在)で776種類ですね。1年目は、毎日新たな食材を使って作りました。2年目からはもう『新食材はムリ!』ってことになったので、『ワールドおにぎり』という新たなテーマを始めています」
――なるほど。そのワールドおにぎりとは何ぞや、という話はあとでお聞きするとして、毎日違うおにぎりをインスタグラムで365日アップするという事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
ユウコ 「まず、私の母はもともと料理が得意でした。かなり凝った料理も作っていたのです。しかし、家庭内で、父親や兄からは特に何も反応もなく(笑)」
母「うん、ご馳走様、で終わりですから(笑)」
ユウコ 「私は食べることが好きで、インスタで何かやりたい、とは思っていたので、だったら母親と一緒に何かしらの料理をアップしてみんなに褒めてもらおうと(笑)」
――なるほど。では『おにぎり』というテーマを選ばれた、ということですね。
ユウコ 「実は過去に、母親が知り合いから頼まれて定期的におにぎりを作っていたのです。でもいろいろ制約があって作れるものも限られていたんです。それが私にはストレスだったんですよ」
――ウチの母親なら、もっと美味しいおにぎり作れるのに…ということですね。
ユウコ 「そうです。だからインスタやるならおにぎりにしようと」
――ユウコ さんとお母さんの役割分担はどうなっているのです?
ユウコ 「まず食材の入手は分担していますが、主に私がいろんな食材を買ってきて、そこからどんなおにぎりを作るかは母親が考えています」
――1年目から2年目の途中まで、毎日違う食材を使ったということですが、これ、食材探しが大変ですよね。
ユウコ 「そう! ともかく新しい食材を探して手に入れるのが本当に大変でした。新しい食材見つけた時は本当にうれしいんです。ただ、母親にとっては、これどうやっておにぎりにするの?って戸惑ってますけど」
ユウコ 「苦労して入手した新しい食材を、母親が一度に2つ使ったりしたら『もー!お母さん!』って文句言ったりもしてます」
母「最初は、たかだか1年間だから食材もぜんぜん足りると思ってたんだけどね」
――笑。お母さんも大変ですね。
ユウコ 「まずおにぎりに使えるもの、そして私たち自身が食べたいと思うもの、と考えると、なかなかないのです。着色料も自然色素のものしか使いませんし」
――過去使われた、変わった食材は?
母「カメノテはかなり美味しかったですね」
※「カメノテ」・・・磯の岩肌に、貝のように張り付いて生息している甲殻類の一種。愛媛県では味噌汁の具などで使われている。見た目が亀の手に似ていることから命名された。
ユウコ 「私はフジツボが美味しかったですね」
母「わざわざ青森の名産地から取り寄せたんです」
ユウコ 「獲れたままの状態で取り寄せてますから、朝からフジツボの身をこそぎ落して…大変でした」
――フジツボ・・・・どんな味なんですか?
母「甲殻類の味ですが、もっと上品な感じ。ほんと美味しいですよ。おにぎりでなくてもいろんな料理で使えるし、おススメですよ」
ユウコ 「あとはアケビとか」
――アケビ? 山に入ると見つかるような果物ですよね? おにぎりで果物?
母「使うのは中身ではなく皮です。東北の方ではよく料理として使うみたいですよ」
ユウコ 「ワニも使いました」
――あー!昔ゲテモノ居酒屋みたいなところで食べたことはありますが。
ユウコ 「バター焼きにしたんですが、臭みもなくって美味しかったですよ。あ、マンボウの腸も美味しかったですよ」
母「アヒージョにしたんだったよね」
ユウコ 「バナナの花のつぼみ、なんてのも」
ユウコ 「キノコ屋さんから協力してもらって、獲れたその日にいろんなキノコを送ってもらったりもしています。普段は流通に乗らない、知らないキノコもいっぱいありました」
ユウコ 「錦市場の珍味屋さんに買い物に行った時にサソリをもらったこともあります。乾燥したやつ」
――サ、サソリですか!?
母「さすがにそれは使ってないです(笑)。食べる人が顔をしかめるような料理は作りたくないので。ちゃんと美味しく食べられることが大事ですし」
――2年目の半ばからは『ワールドおにぎり』ということで国別のおにぎりを作ってますよね。
ユウコ 「現在は70数か国目ぐらいですかね。それぞれ、食材もちゃんと現地から取り寄せて。これね…送料がえらいことになるんです(笑)。食材の価格以上に送料がかかっちゃう」
――そうなるとかなり原価の高いおにぎりもあるんでしょうね。
ユウコ 「例えばキャビアを使ったものとか、ひと皿で原価1万円以上というおにぎりもありますよ。5000~6000円程度なら山ほどあります」
母「今は『都道府県おにぎり』というテーマもやっているんですが、少し前に『三重県おにぎり』をやったのですが、その時に伊勢えびとハマグリ使って。それも高かったですね」
ユウコ 「よく『お金持ちの道楽やな』的なことも言われるんですが、経済的な余裕はぜんぜんなく(笑)。でも、まずは純粋に楽しいし、食材を提供して下さった方への感謝の気持ちの表現でもあるのです。まあ、将来への先行投資という側面もありますが」
――なるほど。その将来のビジョンとは?
ユウコ 「やはりレシピ本は出したいですけどね」
――それは楽しみですね。実際、フォロワーからの手ごたえはどうです?
ユウコ 「ワールドおにぎりをやっていると、その国の方から『めっちゃいい!美味しそう!』とか言ってくれる時があるのです」
母「現地の方から肯定されると、ほんとホッとしますね。『今度はボクの国のも作って』とか言ってくれる方もいます」
――始めてみて、お父様とお兄様の反応は?
ユウコ 「最初は『インスタ?何それ』という感じで小ばかにしていましたね」
母「まあ、毎朝おにぎり作りにかなりの労力を使っていたから、普段の朝ごはんが雑になったりしてましたから (笑)」
――今はどうなんです?
ユウコ 「父はだいぶ前にリタイアしたのですが、今はひたすら市民農園で農作業してます。そこで採れた食材を使うこともありますし、父親が農園で他の方のお手伝いをよくしているので、その方から食材をもらってきたり。ある時なんか、農園に行ったはずなのに伊勢えびを手に入れて帰ってくる、なんて時もありました(笑)」
――じゃあ、お父様も結構協力してくれていると。
ユウコ 「そうですね。農園で『新しいフォロワー作ってきたで』と言って帰ってくることもありました」
母「新しい食材の買い出しにも協力してくれていますよ。朝からいろいろ買いに行ってもらってます」
――結果的にはみんな協力して作ってるんですね。
ユウコ 「ちなみに『いいね』の最高値を100件更新するたびに、母にお祝い金30,000円を渡しているんです。今まで最高が1800なんで、今まで18回渡してますね。そこから父親にも小遣いとしていくらか渡るようです。それが励みになって、父も母も頑張ってくれたら(笑)」
母「それ目当てに頑張ってます(笑)」
ご苦労しつつも、なんだかんだと家族で楽しそうにおにぎり作りを続けている ユウコ さん。今後のおにぎりにも期待しつつ、レシピ本が楽しみ!
取材・文 KGB編集長 宮本昭仁