西田辺の「食悦堂」、天王寺の「酒解(さかとけ)」で知られるreor株式会社 。どの店も圧倒的なコスパの良さで知られる。特に天下茶屋の「酒解」、天王寺の「さかとけ」の人気は絶大だ。今回、その人気の秘密を、代表取締役の平岡公威さんに聞いてきました。

reor 株式会社  平岡公威氏

――まず平岡さんが飲食店経営をされた経緯とは何ですか?

「高校時代、通学に1時間ぐらい満員電車に揺られて通学してたんですが、このままサラリーマンになって定年までこの通勤を続けるのは無理やぞ、と思って自分で何かをやりたいと決めていました。それで、大学の アルバイト先が飲食店だったということもあり、飲食店をやろうと思ったんです 」

――最初の店は?

「西田辺の『 食悦堂(しょくえつどう) 』という店をオープンしたのです。2階が個室になっている、100席ぐらいの居酒屋ですね」

――始めての店にしては大バコですね。

「そうなんですよ。僕が大バコでしか働いたことがなかった、ということもあるし、100席ぐらいあった方が流行るイメージがあったんです」

――メニューも和洋中なんでもある形ですよね。

「例えば自分が客として行く時、自分は魚が食べたいのに同行者は焼鳥食べたいと言い出すような時、どちらかが我慢するのがイヤやな、と思ってましたから」

――なるほど。そこから天王寺に「さかとけ」、天下茶屋に立ち飲み「酒解(さかとけ)」、東住吉に「食へ集う 千す」と次々にオープンされましたね。まずこの「酒解」という店名、面白いですね。

「屋号を決める時、いろんな言葉からベストなものを選びたいと思って、広辞苑を見てたんです。そしたら「酒解神(さかとけのかみ)」という神様がいたんです。初めて酒を作って神々に献じた、酒造の祖神で」

天下茶屋の「酒解」

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――ここは大バコの本店と違って立飲みなんですね。

「もともと僕が立ち飲みは好きではなかったんです。『なんで立って飲まなあかんねん』と(笑)。でも天下茶屋=立ち飲みの店だったんで、勉強がてらにあらためて立ち飲み屋を巡ってると、『立ち飲みめちゃおもろいやん』と思うようになって」

――もはや押しも押されぬ人気店ですが、やっぱり「品数が多い」「安い」「コスパがいい」のが評判ですね。

「コンセプトは西成感ですから(笑)。品数が多いのは、僕の自信の無さの表れですね。いろいろ作ってみて、どれかが気に入ってもらえたらいいなと。まあ、そこから人気メニューの分析をしてブラッシュアップしてきた感じですね」

――では料理のおすすめは。

「『 パンドラの箱 』というメニューがあります。まあ刺身の盛り合わせなんですが」

パンドラの箱 999円

――ああ、あり得ないボリュームの!

「9~10種入って999円。1種100円ぐらいですね。開けたらもう病みつき、離れられへんで!という意味でこの名前にしました。一人では食べられない量ですから、みんなでシェアしてもらえれば」

――あと、「あれ」という名前の、何が出てくるか分からない一品もあるようですが、値段80円???

「その日の調理過程で出てくる端っこの食材をうまく加工して一品にしています。端っこで見た目が悪いというだけで捨てる店の多いのですが、ぜんぜん美味しいのにもったいないやんと思うんです。80円やし、お客さんにとってはかなりお得だと思います」

――「あれ」をどんな料理にするかは誰が考えてるんですか?

「メニューは従業員が自分で考えてます。彼らのとっての力試し。『今日はだれだれ君やからあれちょうだい』とか言って頂てるんで」

――ドリンクでも変わったものがあるようですが。

「実は酒解には『 アルコールやったら何でもええわ 』という名前のメニューがあるんです。実際に、店に入るなり「アルコールやったら何でもええから持ってきて」と言ってくるお客さんがいたんで、いっそのことそういうメニューを作ってしまおうと。そこで出すお酒は、選べないかわりに値段はかなりお得ですね」

――なるほど。お客さんにはありがたいメニューが多いですが、やっぱりコロナで大変だったのでは。

「時短という中途半端なカード出されましたからね。でも時間軸を昼にずらして、昼から開けるようにしてました。お弁当も始めましたよ。お弁当は、今あるメニューに100円足してくれたらご飯と味噌汁、お漬物、小鉢2品付けてます」

――え、ちょっと待ってください。今あるメニューに100円足したら弁当に? だったら、80円の「あれ」をメインにしてもいいんですか? 180円ですよ?

「もちろんいいですよ。さすがに原価割りますが(笑)、このご時世に儲けに走れないですから」

――ほなら売上はどうしても下がりますよね。

「売上は落ちましたね。でもアルバイトにも我慢してもらったり、社員は少しでも頑張って。今やっとアルバイト戻せるようになりました」

――この時期にも関わらず、新店をオープンされたとか。

「5月26日に天王寺にオープンしたんですが、店名は『 シ酉角刀牛 』。なんでこんな店名にしたか分かります? まさに“IQサプリ”的なことですよ(笑)」

――ん? し・・・・とり・・・・かく・・・さっぱり分かりませんが。

「2店名の店名『 酒解 』を分解したらこうなるんですよ」

――なるほど! ちくしょう! ・・・ってことは読み方も“さかとけ”でよい?

「まあ“しとりかくとうぎゅう”って言ってもらっても“さかとけ”と言ってもらってもいいですよ(笑)。お客さんに任せてます。立ち飲みの店ですね」

――小さいけど2階もあるんですね。

「はい。内装は、スケルトンの状態ほぼそのまま(笑)。まるで工事中の店舗でご飯を食べている非日常的な感覚を味わって頂けますよ」

――なるほど。まあ緊急事態宣言も解除されて、今後どうすべきか悩んでる飲食店さんも多いと思うのですが、今後の展開はどう考えておられますか?

「いろいろ試してみたい、という思いはあります。まあ最終目標は温泉宿をやりたいですね。そこで陶芸して焼いた皿で食べる、農業体験してその米を食べる。そういう、地域と一緒になって食育も兼ねていろいろ楽しめる総合的なリゾートを作りたい。魚を食べたいと思ったら船出して釣りに行きましょう!ってな(笑)」

――それは楽しそう!

「それに、従業員たちもそれぞれこんな事がやりたいという夢があるから、それを実現していけたら思います。露天風呂でお盆浮かべて従業員みんなで乾杯する、ってのが夢かな(笑)」

文:KGB編集長 宮本昭仁

店名シ酉角刀牛
住所 大阪市天王寺区堀越町15-16
TEL06-6775-3900 ※現在敷設工事中
営業時間未定
休日未定

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