いつもKGBニュースをお読みいただき、誠にありがとうございます。日々、関西の様々な飲食店さんについて、記事をあげさせていただいていますが、今回は少し趣向を変えて、ご家庭の食卓や外食など、様々な「食」の場面には欠かせない、お野菜や果物を、関西を中心に取り扱っていらっしゃる、みくりや青果株式会社の細田副社長(以下、細田さん。)を、大阪府中央卸売市場内にある事務所にお訪ねし、お話をうかがわせていただきました。(聞き手:上野屋 誠。以下、上野屋。)


創業は60年前の、1959年。

お話をうかがった事務所のある、大阪府中央卸売市場の看板。

上野屋
「よろしくお願いいたします。早速ですが、大学をご卒業されてからのご経歴を、簡単にうかがってもよろしいでしょうか。」

細田さん
「よろしくお願いします。私は大学を卒業してから3年間、ニュージーランドや、アメリカのテキサス州・ヒューストンなど、各地の農場や小売りの現場で勉強しました。その後2年間、東京の三井物産株式会社の、戦略研究所というシンクタンクに研究員として勤務し、28歳の時に、みくりや青果株式会社に入社しました。」

上野屋
「みくりや青果株式会社について、うかがってもよろしいでしょうか。」

細田さん
「創業は60年前の1959年。東大阪市の御厨(みくりや)という所で、祖父が「みくりや青果」として商売を始めました。その時は、大阪木津地方市場でした。その後、1978年の大阪府中央卸売市場の開設に伴い、みくりや青果株式会社を設立しました。(筆者注:同時に、代表取締役社長に、お父様にあたる細田現社長が就任。)現在、みくりや青果株式会社は売上130億円、他に、グループ会社として、カット野菜や小売り、中国の現地法人などがあり、グループ全体で270億円の売上があります。」

上野屋
「ご創業から60年、売上270億と、一朝一夕では成せない数字が並びますが、色々とご苦労があったのではないでしょうか。」

細田さん
「お野菜は、1本1個が100円以下であることが珍しくない商品です。いいものを提供して、リピーターを増やし続けてきて、今がありますから。270億円という数字を、100円以下のお野菜で考えると、相当な数字です。」

上野屋
「ちゃんとした品質のものを提供し続けて、信頼をいただいて、その結果の数字と考えると、本当に重みのある数字ですね。」

「今、力を入れて取り組んでいらっしゃることは、何でしょうか。」

細田さん
「大きく三つあります。一つめは、社会貢献。具体的には、生産者である農家の方の支援です。特に、規格外品として発生している廃棄について、問題意識を持っています。二つめは、野菜に付加価値をつける。具体的には、野菜を使ったお惣菜などを自社で作っていくことです。三つめは、人材育成。10年後、20年後を担う若い力を育てていくことが重要だと考えています。」


廃棄につながる、「規格外」・・・。

味は同じでも、形が不ぞろいだと、出荷が難しくなる現実が。

上野屋
「お話にあったうちの、社会貢献について、お話を聞かせていただきだいですが、クラウド・ファンディングで、規格外のお野菜についてのプロジェクトを立ち上げていらっしゃるそうですが、それもこの取り組みの一環でしょうか。」

細田さん
「そうです。農家の方々のお困りの声を聞いて、規格外のお野菜について、社会のニーズがあるのであろうか、賛同を得られるのであろうか、という思いから、立ち上げました。」

上野屋
「観測気球というか、まず世間の感触を確かめてみたい、ということですね。」

細田さん
「その通りです。その為、目標金額は10万円に設定して、今(5月4日現在)で半分程度まできています。」

上野屋
「ここで取り上げられているのは、新玉ねぎですね。具体的には、どちらの地域の農家の方が育てられたものでしょうか。」

細田さん
「主に佐賀か淡路島です。」

上野屋
「関西で暮らしていると、「淡路島の玉ねぎ」と言えば、ブランド力のある農産品として、よく耳にしますが、それでも廃棄が発生しているのですね。」

細田さん
「そうですね。やはり、形がいびつであったりする規格外品は、そうなっていきます。今回、取り上げている新玉ねぎは、収穫が早い順に、早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)という呼び方があるのですが、そのうちの中生です。早生は水分が多くて、若干の黄色味を帯びているものですが、中生はそれよりも水分が少なく、その分ご家庭でも比較的に長持ちしやすいものです。今回は、あえて中生を選んでいます。」

上野屋
「そうなんですね。新玉ねぎ10kgという量は、さすがに1人だけではハードルが高いですが、ご近所や職場などでシェアすれば、使い切れない量ではないようにも思えますね。」


廃棄情報の集まる、プラットフォームを作りたい。

もったいないですね・・・。

上野屋
「今回は新玉ねぎですが、他の野菜にも同じような現状があると考えてよろしいのでしょうか。」

細田さん
「新馬鈴薯ですとか、かぼちゃ、里芋、さつまいも、など、色々とあります。特に、土ものですかね。日持ちがしても、形状が規格外だと廃棄となってしまいます。」

上野屋
「冒頭、海外で働かれたご経験があるとうかがいましたが、このような状況は、日本だけなのでしょうか。」

細田さん
「海外でも多少はありますが、日本ほどの状況ではありません。日本人の目が厳し過ぎるのだと思います。こだわり過ぎの感があります。」

上野屋
「なるほど。今回の取り組みを契機として、今後はどのように展開していきたいとお考えでしょうか。」

細田さん
「今回の新玉ねぎに限らず、全国の様々な農産品が、規格外などで廃棄になりそうであるという情報が集まってくる、プラットフォームのようなものを作っていけたらと考えています。」

上野屋
「プラットフォームの無い今でさえ、全国の農家の方々と取引をしている中で、お困りの声が聞こえてくるのだから、本来はもっと多くの方が同じような状況にあるはずだろう、ということですね。」

細田さん
「その通りです。間違いないはずです。」


民間主導で、日本の農業を元気に。

笑顔が一番!

細田さん
「弊社が日本の流通業の中で仕事をさせていただいて、60年。日本社会の高齢化や少子化は、都市部だけでなく、農村部にも押し寄せてきています。若い世代の担い手の不足により、耕作放棄地も増え続け、古き良き日本の農村風景が失われてきています。なぜか。それは生活をしていけないからです。それでは、あかん! 民間主導で、農家の方々を元気にしていく。一生懸命に農作物を育てている方々の気持ちを、多くの人に伝える。それが私たちの仕事だと思っています。」

上野屋
「その方法の一つが、廃棄問題を考えていくことなのですね。」

細田さん
「そうです。天下の台所・大阪には、全国各地からお野菜や果物が集まってきます。見栄えは良くなくても、品質は良いものが広く受け入れられるように、みくりや青果として取り組んでいきたいと思います。」

上野屋
「本日は、大変にお忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。」


その数字に含まれないもの。

上野屋
環境省のサイトによると、平成27年度の推計で、日本では年間2,842万トンの食品廃棄物が出されており、このうちの646万トンが、一般に「食品ロス」と呼ばれる、まだ食べられるのに廃棄される食品であるとのこと。しかし、この膨大な数字の中には、本記事で取り上げさせていただいた、出荷される前の、生産段階で廃棄されている農産品は含まれていません。食品ロスは言うまでもなく重大な問題ですが、その前に発生している廃棄の問題についても、本記事が考えるきっかけになれば幸いです。」

「最後に、本記事で取り上げた、クラウド・ファンディングのページを改めてご紹介させていただくと共に、細田さんが所属していらっしゃる、一般社団法人大阪青年会議所で企画されている、高校生を対象とした人材育成プログラム「GLOBAL YOUNG ACADEMY OSAKA」についてのページをご紹介させていただきます。」



(文及び構成 上野屋 誠)

おすすめ記事