この2店を食べずして麺類を語るべからず

 2021年10月8日、阪急百貨店うめだ本店12階「祝祭ダイニング」に、2つの店舗が同時オープンした。一つは、絶品きつねうどんで知られる「道頓堀 今井」。もう一つは、明治13年創業の「かんだやぶそば」から独立してその味を守り続ける「やぶそば」。
 それぞれ西と東を代表する名店が、目と鼻の先に同時に登場したのだ。ここであらためてそれぞれの店を紹介していこう。

「道頓堀 今井」とは

写真は道頓堀にある本店

 まず、 1838年(天保9年)、初代・今井佐兵衛の一人娘「たけ」が、道頓堀の中座向かいで芝居茶屋「稲竹」を創業した。1838年といえば、 安藤広重の「東海道五十三次」の浮世絵 が出来上がってから5年後。前年には「大塩平八郎の乱」とか起こってた時代だ。
  1869年に今井3代目、今井佐兵衛が芝居茶屋「稲竹」を継ぐ。 そして4代目、今井三之助が芝居茶屋「稲竹」の営業権を女番頭だった野村照に譲り、5代目の今井寛三の発案で西洋楽器商「今井楽器店」を創業した。
 そして太平洋戦争による疎開後、道頓堀に戻ってきた5代目・今井寛三一家は食べ物屋として再出発し、めん類も内緒で販売したらしい。これを転機に「おそばとうどんの店」、後の「御蕎麦処今井」がスタートした。

 「道頓堀 今井」の味の決め手は、やはり出汁だ。1949年、5代目寛三の妻である今井マチ子が、長年の研究の末、 北海道産の天然昆布と九州産のさば節・うるめ節を使用するこの出汁を完成させた。

 なにわうどんならではのほどよい柔らかさの麺、口に含むと永遠に旨味を醸し出す出汁。まさにこれが「道頓堀 今井」の神髄なのだ。

「やぶそば」とは

写真は「赤坂Bizタワー店」
東京・神田の「かんだやぶそば」

  さてこの「やぶそば」を語るには、この店の本家にあたり、江戸3大老舗蕎麦「藪(やぶ)」の総本家「かんだやぶそば」の話から。「かんだやぶそば」は1880年創業。江戸生まれ、緑色の麺が特徴の「籔蕎麦」において「籔御三家」の一つで「並木籔蕎麦」「池の端籔蕎麦」に並ぶ名店だ。

 その店で修業し、1966年にのれん分けで独立したのがこの「やぶそば」を経営する「杉並籔蕎麦(すぎなみやぶそば)」だ。
  店内の製麺室にある漆塗りの木鉢を使い、そば職人が国内産石臼挽きそば粉で数時間おきに打ち上げる麺。 厨房にてかつお節の削りから始めるという、140年伝承された藪の製法を守り、天然の利尻昆布も加えて三日三晩熟成するというそばつゆ。まさに江戸職人のこだわりと粋を体現したような店だ。

「道頓堀 今井」は親子丼も絶品!

 「道頓堀今井」は、名物「きつねうどん」(1人前)830円だが、「親子丼」 (小うどん付/1人前) 1650円もたまらなく旨い。
 丼の出汁は、うどんに使う出汁をベースに愛知県産の本みりんなどで仕上げる。上質な若鶏、厳選した玉子、笹打ちにした青ねぎと、素材それぞれにおいても吟味を重ねた結果だ。

梅田店オリジナルの御膳が魅力!

 「やぶそば」といえば、やっぱり「かもせいろう」(1人前)2057円。埼玉県産の合鴨肉と伝統のそばつゆの相性が抜群。だが今回は、阪急うめだ本店だけのオリジナル御膳 「江戸小町」(1人前)2200円 も用意。3種類の冷たいそばのお椀と小天丼がセットになっていて女性に高い支持を得ている。

 多くの芸能人も愛してきたこれらの名店。この2店舗を、それぞれ量を調整すれば一度に味わえる。場所は阪急百貨店12階の「祝祭ダイニング」。ぜひ食べ比べを楽しんでほしい。

関西グルメブロガーズ 編集長 宮本昭仁

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